中国農薬餃子が宇都宮餃子に残した影響 (1)
2008年に起きた中国製農薬入り餃子事件の容疑者がこのほど逮捕されたという。事件発覚から2年以上を経て、ようやく事件解明が進みだしたことになる。
この事件は、日本の食品業界に大きな影響を与えた。とりわけ、冷凍餃子への農薬混入であったことから、餃子をはじめとする冷凍食品、そして、中国産の食品の輸入・消費が大きく打撃を受けた。事件の発覚から2年、その影響は依然続いているようだ。
総務省の家計調査でみると、「冷凍調理食品」は、事件発覚の2008年の購入額(一世帯当たり・一年間)は3,689円で、前年比91.5%にとどまったが、2009年には99.2%になった。全国的には、ほぼ回復したようだ。しかし、宇都宮においては、事態が異なる。2008年の落ち込みも70.9%と、全国の3倍になり、2009年でも74.4%にとどまっている。
同じく、影響を受けた「ぎょうざ」の項目でも、全国では91.2%まで回復している。しかし、宇都宮では、2008年が5,221円だったのに、4188円、3429円と落ち込みが止まっていない。このため、僅かながら購入額を伸ばした浜松市の猛追を受け、あわや首位陥落かというところまで追いつめられた。
ところで、家庭で作られる餃子を除けば、消費者が餃子を購入した金額は、家計調査では四つの項目に計上される。第一は「ぎょうざ」で、総菜として売られる調理済みの餃子がこれにあたる。よく話題になる、餃子消費額は、この項目である。第二は、「冷凍調理食品」で、冷凍食品としての餃子はこの項目に入る。第三は、外食費の中の「中華食」にカウントされる。宇都宮に多い餃子専門店で食べる餃子は、もちろんこの項目になる。それだけでなく、持ち帰りの餃子もまた、この項目に入る。だから、餃子専門店だけでなく、中華料理店などでの餃子の持ち帰りは、「ぎょうざ」の項目には入らないのが原則だ。最後は外食費の中の「中華そば」である。ラーメン店での餃子も、本来は「中華食」に計上されるはずだが、実際はこの項目にかなり含まれてしまっている。ラーメンと餃子の組み合わせは定番中の定番だが、代金の支払いを別にするわけもなく、「中華そば」にカウントされたりする。同じことは、他の外食費の項目にも言える。そこにも餃子が潜んでいるだろうが、しかしこの金額はさほどのものではないだろう。この四つの項目の中に、ほぼ餃子の購入金額の大部分が含まれていることは確かだ。
そこで、この四項目の年別の変化を調べてみた。しかし、その合計金額は、全国平均、宇都宮、浜松とも、さほど変化していない(浜松は、07年のデーターがないが、08、09年は同じ傾向である)。
[ 全国 ] 2007・08・09
「ぎょうざ」 1872、1541、1707
「冷凍調理食品」 4030、3689、3996
「中華食」 5206、5113、4448
「中華そば」 5625、5865、5618
「合計」 16733、1602、15769
[ 宇都宮 ] 2007・08・09
「ぎょうざ」 5022、4188、3429
「冷凍調理食品」 5221、3702、3883
「中華食」 6518、6445、5345
「中華そば」 8352、9462、11472
「合計」 25113、23797、24129
[ 浜松 ] 08・09
「ぎょうざ」 3088、3336
「冷凍調理食品」 4587、5432
「中華食」 3400、4058
「中華そば」 7399、5085
「合計」 18474、17921
四項目の合計では、ほぼ同じような動きをしているのに、それぞれの項目では三者三様の動きになっている。「ぎょうざ」では、全国平均と浜松が、08年の落ち込みから回復してきているのに、宇都宮ではさらに落ち込む展開になっている。「冷凍調理食品」は、全国平均ではほぼ回復しているが、宇都宮は大きく落ち込んだまま。それにたいし、浜松は18%増だった。「中華食」では、全国平均と宇都宮が大きく落ち込んだのに、浜松はこれまた19%増になっている。逆の傾向をみせたのが「中華そば」で、浜松が前年比69%に落ち込み、宇都宮が137%と大幅にアップ、全国平均はほぼ横ばいである。なぜ、これほどに異なる動きをするのか、そこに、宇都宮と浜松の餃子事情の違いがひそんでいるようだ。 (続く)