「悪名は無名に勝る」のか ―宇都宮餃子VS浜松餃子(4年間の検証)―
3 浜松市の「餃子消費量アンケート」のからくり
③あり得ない餃子購入額
「餃子消費量アンケート調査結果」で発表された数字は小数点以下2ケタになっている。たとえば、「一世帯あたりの月間値」は「食べる回数・2.94回、食べる個数・28.08個、支出金額・2468.59円」だという。いかにも「厳密な調査」であったかのような数字である。だが、考えてみれば、そもそも「アンケート」では、「餃子をどのくらい食べていますか?」と大雑把に回答を求めていたにすぎない。大雑把な質問に対する大雑把な回答をいくら細かい数字で報告しても、それで「厳密な調査」になるわけではない。
では、浜松市の「餃子消費量アンケート」によって得られた数字はどのようなものか。
報告書で示された金額と、浜松市が政令指定都市となり家計調査に初めて掲載された2008年の金額を比較してみよう。
浜松市のアンケートでは、餃子の購入形態を4つに分類していた。このうち、「①お持ち帰り餃子・餃子専門店、餃子を出すお店などでお持ち帰り(テイクアウト)した餃子」と「②外食・餃子専門店、餃子を出すお店で食べた餃子」は、家計調査では「外食」のなかの「中華食」に分類されている事はすでに述べたとおりである。①が12,647円、②が7,186円という報告なので、「中華食」に含まれる浜松市の餃子の購入額は19,833円となる。ところが、家計調査によれば、浜松市の一世帯あたりの「中華食」は、3,400円に過ぎない。浜松市は5倍以上、6倍近い金額を示していたことになる。しかも、浜松市の金額は餃子だけの金額だが、家計調査の「中華食」には、中華そばを除く中華料理一般の外食も含まれている。浜松市の主張する金額がいかに過大であるか一目瞭然である。ちなみに、宇都宮市の「中華食」の金額は6,445円であり、この数字からも宇都宮市の市民は、浜松市民より餃子を食べているであろうことがみてとれる。
「③生餃子・焼餃子・スーパーや餃子販売店などで売っている冷凍以外の餃子」も、浜松市のアンケート(6,756円)は家計調査(3,088円)と乖離した金額になっている。「④冷凍食品・スーパーなどで売っている冷凍餃子」でも、さまざまな冷凍食品を含む家計調査の「冷凍調理食品」の4,587円に対し、餃子だけで3,034円というのは過大であろう。
言えることは、浜松餃子学会が「厳正な調査」・「実際の国の統計と同じレベルの精度」・「かなり信憑性のあるデータ」だとした「餃子消費量アンケート」は、この程度の精度しかなかったということである。これは、最初からわかっていたはずのことで、この程度の調査結果をもとに「浜松市こそ餃子購入額日本一」を鳴り物入りで喧伝した浜松市と浜松餃子学会の責任は重い。