家計調査「ぎょうざ」の戦い(宇都宮VS浜松)
3年目も接戦?(遅れる宇都宮の回復と浜松の足踏み)
宇都宮の、家計調査「ぎょうざ」の購入額は、2013年になっても低迷を脱しきれないスタートだった。1月、2月は、東日本大震災前の2010年比だけでなく、前年比でもマイナスだった。宇都宮が繰り広げた「日本一奪還運動」の成果なのか、あるいは自律的回復なのかはともかく、2012年の後半は回復基調だった宇都宮だったのだが、再び落ち込んでしまったのである。浜松は、3月まで好調をキープした。宇都宮とは対照的に、2010年比、前年比ともにプラスを記録した。この結果、浜松は、3月までの累計で1,285円となり、宇都宮(962円)から328円のリードを奪った。2012年の3月末では、宇都宮に26円の僅差だったがリードを奪われていたのだから、上々のスタートに見えた。
4月になると、浜松が変調をきたす。前年比で10か月間プラスを続けていたのに、ここにきてマイナスになってしまった。宇都宮は、3月以降、2010年比では相変わらずマイナス状態であるものの、前年比でプラスに転じ、足踏みしている浜松に追いすがった。とくに、4月には昨年の7月以来久々となる500円台を記録している。3月と5月が、前年比からはプラスになったものの、前年までの落ち込みが大きい分だけ、金額的には少なく、浜松に及ばなかったため、追いつくことはできなかったものの、171円差に迫ったのである。
浜松の2012年は、前年比108.3%だった。2013年の5月時点では、105.7%と、増加率が伸び悩んでいる。宇都宮は、それぞれ116.8%、122.3%と、浜松とは逆の傾向を見せている。浜松の場合、東日本大震災前の2010年は、4,755円だった。2012年には4,670円とほぼ回復し切ったことになる。これからは、実績の回復でなく、新たな消費拡大で積み上げていかなければならない。だが、宇都宮の場合、2010年の実績は6,134円である。2012年は4,365円でしかなく、まだまだ回復の途上にある。宇都宮の伸び代には余裕がある。あの中国農薬餃子事件の影響を脱するのに2年を費やした。大震災からは、すでに2年が過ぎた。回復基調が続く可能性は高く、そうであれば、今年中の日本一奪還の可能性も高い。宇都宮と浜松の地力の差は、まだまだ大きいのだから。
宇都宮の「ぎょうざ」購入額が、回復基調にあることは間違いない。「日本一奪還運動」が、それを速めたのかどうか、微妙であろう。速めたということもあり得るが、さほどの影響を与えていない可能性もある。悪影響を与えたかもしれないという可能性さえあることは、このブログでも指摘した。
家計調査の「ぎょうざ」の購入額日本一というタイトルが、宇都宮にとって重要であること、そのとおりである。宇都宮が餃子の街であると、全国的に認識された原点は、そこにあった。政府の統計という裏づけは、誰にも受け入れやすく、餃子の街・宇都宮の象徴にさえなっていたことも事実である。失って初めて、それが大事であったことを知り、残念に思うことも理解できる。だが、家計調査の「ぎょうざ」購入額日本一が、そのまま餃子日本一であるわけではない。それでも、浜松が日本一だといわれてしまう。餃子全体の消費量などの直接的統計が存在しない以上、仕方がないことかもしれないけれども、「ぎょうざ」と「餃子」がごちゃごちゃになってしまっている。
宇都宮日本一奪還計画のスタートにあたり、「宮の天狗」は、「昨年を大きく割り込んだ宇都宮市の餃子消費量。果たして震災だけが理由でしょうか?そこには、地域の食や地域社会への愛着の低さ、理解度の無さ、身近になりすぎた宇都宮餃子ブランドへの慢心など、宇都宮市民のソウルフード『宇都宮餃子』への関心の低さもひとつの原因だと考えられます」と書いている(2012年5月24日・天狗ブログ)。だが、消費量が割り込んだのは、家計調査の「ぎょうざ」であり、宇都宮餃子そのものではない。惣菜としての「ぎょうざ」と餃子店の「餃子」の購入額は、競合関係にある。宇都宮の場合、餃子全体に消費する金額が抜きんでて多いので、「ぎょうざ」の消費額も多いというわけである。宇都宮餃子に関心が強まれば、それまで「ぎょうざ」を食べていた人も、「宇都宮餃子」を選択するようになる。宇都宮餃子への関心の低さが、「ぎょうざ」購入量の割り込みにつながるわけではない。だから、日本一奪還の目標が、家計調査の「ぎょうざ」であれば、その手段が「いつもの通り宇都宮餃子を食べていればいい」(同上)ことにはならない。それは、宇都宮餃子の消費拡大にはつながるかもしれないが、宇都宮の「ぎょうざ」消費量には直接結びつかない。
そんなことは、天狗も充分わかっていたのだろう。真に恐れたのは宇都宮餃子の地盤沈下であり、家計調査の結果は、それを促進してしまう恐れがあるからの憂慮だったろう。天狗は、基本的に競合する二兎を追わざるを得なかったのである。だから、家計調査の結果にプラスに働いたのか、逆にマイナスに働いたのかさえ判然としない結果になってしまった。天狗が「地域の食や地域社会への愛着の低さ、理解度の無さ、身近になりすぎた宇都宮餃子ブランドへの慢心など、宇都宮市民のソウルフード『宇都宮餃子』への関心の低さ」を憂い、宇都宮がいつまでも餃子の街であり続けることを願うなら、そのための運動に専念したほうが良い。家計調査の日本一は、自律的回復にゆだねておけばいいのである。そうすれば、日本一の餃子の街・宇都宮は、自然と、家計調査の「ぎょうざ」消費量日本一も取り戻すことができるだろう。