宇都宮VS浜松が大接戦
『ぎょうざ』購入額(家計調査)、二強時代に
総務省の家計調査の2009年12月分の速報値がこのほど発表された。注目の『ぎょうざ』の項目では、11月までの累計で306円差だった浜松が、12月は629円と今年最高を記録、宇都宮が373円と低調だったため、年間では50円差まで迫った。ちなみに、昨年は1041円差だった。三位以下は、鹿児島、千葉、京都と続くが、二位との差は1300円以上、宇都宮と浜松の二強時代が幕をあけたようだ。
浜松は、2008年の3664円から、2009年は4137円に数字を伸ばした。これに対し、宇都宮は4707円から4187円と大きく減らし、この接戦になった。
浜松の躍進の理由はなんだろうか。もっとも大きな理由は、「浜松市民による浜松餃子の発見」だろう。浜松は、家計調査の単独集計対象になる半年前から、「浜松こそ餃子日本一」を売り込んだ。家計調査とは基準の異なる独自の調査を行い、それを根拠に日本一をあえて宣言した。これをテレビなどが取り上げたことで、「餃子の購入額日本一は、宇都宮でなく浜松だった」と喧伝されたのである。実際には、浜松が単独集計対象になった2008年は、あの中国製農薬餃子事件の影響もあり、一時は浜松が宇都宮を抑える展開になったが、結局1000円以上の差をつけられての二位に甘んじた。
(詳しくはhttp://blogs.yahoo.co.jp/tekisetuusui2351/49522576.html)
日本一を宣言した浜松にとって、2008年の大差での二位は残念だったのだろうか。あるいは、予想以上の健闘だったのだろうか。そんなことは、どうでも良かったかも知れない。浜松市民は、これまで、自分の町が餃子の町であるなどとは考えたことがなかったろう。だが、テレビで浜松日本一説を見聞するにしたがい、「そうだったのか」と考え出す。このとき、浜松餃子(そして餃子という食品自体も)は浜松市民によって改めて認識された。当然ながら、浜松市民の餃子の購入額は増えることになる。浜松の日本一奪取作戦は、表面の結果以上に成功しつつあり、2009年の結果はそれが目に見えてきたことを意味する。2008、2009年と日本一奪取は成功しなかったが、2010年は可能性が高まった。
宇都宮においても、浜松と同じような状況をかつて経験している。宇都宮が餃子日本一の町として紹介され、宇都宮餃子が全国で認知されると、宇都宮の餃子屋の売り上げは上がった。観光客などが訪れる店舗だけでなく、住宅街に店を構える地元客が訪れる餃子店も、売り上げを伸ばしていった。だが、このころ、宇都宮では意外なことも起こった。それまで家計調査の『ぎょうざ』の項目で常に一位を守り続けていたのに、首位を静岡に譲り、二位に甘んじたのだ。1995年のことだ。家計調査の『ぎょうざ』は、「スーパーや総菜店などで売られている調理済みの餃子」が対象である。餃子店の餃子は、持ち帰りでも家計調査の『ぎょうざ』には該当しない。該当する項目は『外食』の中の『中華食』あるいは『中華そば』になる。ラーメン店での餃子の購入は『中華そば』に、餃子専門店などでの場合は『中華食』にカウントされる。宇都宮餃子が再認識されると、『ぎょうざ』から餃子店の餃子へのシフトが起きた。そのため、1995年の『ぎょうざ』の購入額は前年から960円も減少した。その後、『ぎょうざ』の購入金額は回復し、宇都宮は一位の座を取り戻し、2009年までそれを守り続けている。『ぎょうざ』は回復したが、それによって餃子店の売り上げが落ちたわけではない。その後も順調に売り上げ増が続いた。宇都宮では、宇都宮餃子だけでなく餃子そのものの消費が増大したのである。
いま、浜松がかつての宇都宮と同じ道を歩んでいるが、宇都宮餃子と浜松餃子では、少し事情が違っているところがある。宇都宮餃子は、スーパーや総菜店に並ぶことはほとんどない。宇都宮餃子は、餃子店で買うものである。これが、宇都宮市民の常識である。だから、宇都宮餃子に消費者がシフトすると、『ぎょうざ』の購入金額に影響が出た。宇都宮の『ぎょうざ』の購入額には宇都宮餃子が含まれない。浜松では、『ぎょうざ』の購入額に浜松餃子が含まれる。浜松では「大手スーパーや総菜店に卸され、毎日3万個を消費する」餃子店(マルエツ)もあるなど、スーパーや総菜店に浜松餃子が並んでいる。浜松餃子への注目度があがれば、浜松の『ぎょうざ』の購入金額もあがる構造になっている。
一方、宇都宮はどうか。宇都宮の『ぎょうざ』の購入金額は、1995年に3012円だったが、2006年には5074円に達し、過去最高になった。この間、全国平均では逆に減少傾向が続いている。転機は、2008年に訪れた。あの、中国農薬餃子事件で、『ぎょうざ』の購入金額は激減した。それは、とりわけ宇都宮で顕著だった。『ぎょうざ』と冷凍食品の餃子は敬遠されたのは、宇都宮でも同じである。だが、宇都宮には宇都宮餃子があり、宇都宮餃子会はいち早く安全を宣言した。2008年の宇都宮の『中華食』の金額は7162円で、前年より462円増えた。全国平均では4925円と、129円減だったのにもかかわらずだ。『中華そば』でも、宇都宮は9326円から全国平均の5634円の倍近い10135円に伸びている。宇都宮餃子の購入額がカウントされる『中華食』、『中華そば』の金額の増加からは、『ぎょうざ』から、宇都宮餃子にかなりの消費者がシフトしたことをうかがわせる。全国的には、2009年には『ぎょうざ』の購入金額は、2008年に減少した金額(2246円-1838円=408円)の5割程度(217円か)を回復、2055円になっている。『中華食』は、2008年は微減だったが、2009年は474円と大きくマイナスになっている。不況による消費減と価格の下落が原因だろうと思われる。ちなみに、浜松の『中華食』の金額は4600円(前年はデーターがない)で、全国平均より少ない。『中華そば』は、7387円で、全国平均を上回っているが、2009年は全国平均とほぼ同じ5744円まで減少した。
全国的には『ぎょうざ』の購入金額は持ち直しを見せた。しかし、宇都宮ではさらに減少した。不況の影響だけでなく、『ぎょうざ』離れが依然続いているようだ。浜松では、不況の影響をはねのけて増やした。宇都宮では、宇都宮餃子の消費増は『ぎょうざ』購入額とは必ずしも連動しないが、浜松は、連動する構造になっていることが明暗を分けた。こうしてみると、浜松では『ぎょうざ』の購入金額は、今後も増える可能性が強い。餃子全体の消費量はともかくとして、家計調査の『ぎょうざ』の項目については、念願の日本一を奪取する可能性が出てきたといってよい。浜松が上げ潮に乗り続けられるか、宇都宮が再び上昇気流に乗れるのか、二強のデットヒートは、2010年も続く。
『ぎょうざ』購入額(家計調査)、二強時代に
総務省の家計調査の2009年12月分の速報値がこのほど発表された。注目の『ぎょうざ』の項目では、11月までの累計で306円差だった浜松が、12月は629円と今年最高を記録、宇都宮が373円と低調だったため、年間では50円差まで迫った。ちなみに、昨年は1041円差だった。三位以下は、鹿児島、千葉、京都と続くが、二位との差は1300円以上、宇都宮と浜松の二強時代が幕をあけたようだ。
浜松は、2008年の3664円から、2009年は4137円に数字を伸ばした。これに対し、宇都宮は4707円から4187円と大きく減らし、この接戦になった。
浜松の躍進の理由はなんだろうか。もっとも大きな理由は、「浜松市民による浜松餃子の発見」だろう。浜松は、家計調査の単独集計対象になる半年前から、「浜松こそ餃子日本一」を売り込んだ。家計調査とは基準の異なる独自の調査を行い、それを根拠に日本一をあえて宣言した。これをテレビなどが取り上げたことで、「餃子の購入額日本一は、宇都宮でなく浜松だった」と喧伝されたのである。実際には、浜松が単独集計対象になった2008年は、あの中国製農薬餃子事件の影響もあり、一時は浜松が宇都宮を抑える展開になったが、結局1000円以上の差をつけられての二位に甘んじた。
(詳しくはhttp://blogs.yahoo.co.jp/tekisetuusui2351/49522576.html)
日本一を宣言した浜松にとって、2008年の大差での二位は残念だったのだろうか。あるいは、予想以上の健闘だったのだろうか。そんなことは、どうでも良かったかも知れない。浜松市民は、これまで、自分の町が餃子の町であるなどとは考えたことがなかったろう。だが、テレビで浜松日本一説を見聞するにしたがい、「そうだったのか」と考え出す。このとき、浜松餃子(そして餃子という食品自体も)は浜松市民によって改めて認識された。当然ながら、浜松市民の餃子の購入額は増えることになる。浜松の日本一奪取作戦は、表面の結果以上に成功しつつあり、2009年の結果はそれが目に見えてきたことを意味する。2008、2009年と日本一奪取は成功しなかったが、2010年は可能性が高まった。
宇都宮においても、浜松と同じような状況をかつて経験している。宇都宮が餃子日本一の町として紹介され、宇都宮餃子が全国で認知されると、宇都宮の餃子屋の売り上げは上がった。観光客などが訪れる店舗だけでなく、住宅街に店を構える地元客が訪れる餃子店も、売り上げを伸ばしていった。だが、このころ、宇都宮では意外なことも起こった。それまで家計調査の『ぎょうざ』の項目で常に一位を守り続けていたのに、首位を静岡に譲り、二位に甘んじたのだ。1995年のことだ。家計調査の『ぎょうざ』は、「スーパーや総菜店などで売られている調理済みの餃子」が対象である。餃子店の餃子は、持ち帰りでも家計調査の『ぎょうざ』には該当しない。該当する項目は『外食』の中の『中華食』あるいは『中華そば』になる。ラーメン店での餃子の購入は『中華そば』に、餃子専門店などでの場合は『中華食』にカウントされる。宇都宮餃子が再認識されると、『ぎょうざ』から餃子店の餃子へのシフトが起きた。そのため、1995年の『ぎょうざ』の購入額は前年から960円も減少した。その後、『ぎょうざ』の購入金額は回復し、宇都宮は一位の座を取り戻し、2009年までそれを守り続けている。『ぎょうざ』は回復したが、それによって餃子店の売り上げが落ちたわけではない。その後も順調に売り上げ増が続いた。宇都宮では、宇都宮餃子だけでなく餃子そのものの消費が増大したのである。
いま、浜松がかつての宇都宮と同じ道を歩んでいるが、宇都宮餃子と浜松餃子では、少し事情が違っているところがある。宇都宮餃子は、スーパーや総菜店に並ぶことはほとんどない。宇都宮餃子は、餃子店で買うものである。これが、宇都宮市民の常識である。だから、宇都宮餃子に消費者がシフトすると、『ぎょうざ』の購入金額に影響が出た。宇都宮の『ぎょうざ』の購入額には宇都宮餃子が含まれない。浜松では、『ぎょうざ』の購入額に浜松餃子が含まれる。浜松では「大手スーパーや総菜店に卸され、毎日3万個を消費する」餃子店(マルエツ)もあるなど、スーパーや総菜店に浜松餃子が並んでいる。浜松餃子への注目度があがれば、浜松の『ぎょうざ』の購入金額もあがる構造になっている。
一方、宇都宮はどうか。宇都宮の『ぎょうざ』の購入金額は、1995年に3012円だったが、2006年には5074円に達し、過去最高になった。この間、全国平均では逆に減少傾向が続いている。転機は、2008年に訪れた。あの、中国農薬餃子事件で、『ぎょうざ』の購入金額は激減した。それは、とりわけ宇都宮で顕著だった。『ぎょうざ』と冷凍食品の餃子は敬遠されたのは、宇都宮でも同じである。だが、宇都宮には宇都宮餃子があり、宇都宮餃子会はいち早く安全を宣言した。2008年の宇都宮の『中華食』の金額は7162円で、前年より462円増えた。全国平均では4925円と、129円減だったのにもかかわらずだ。『中華そば』でも、宇都宮は9326円から全国平均の5634円の倍近い10135円に伸びている。宇都宮餃子の購入額がカウントされる『中華食』、『中華そば』の金額の増加からは、『ぎょうざ』から、宇都宮餃子にかなりの消費者がシフトしたことをうかがわせる。全国的には、2009年には『ぎょうざ』の購入金額は、2008年に減少した金額(2246円-1838円=408円)の5割程度(217円か)を回復、2055円になっている。『中華食』は、2008年は微減だったが、2009年は474円と大きくマイナスになっている。不況による消費減と価格の下落が原因だろうと思われる。ちなみに、浜松の『中華食』の金額は4600円(前年はデーターがない)で、全国平均より少ない。『中華そば』は、7387円で、全国平均を上回っているが、2009年は全国平均とほぼ同じ5744円まで減少した。
全国的には『ぎょうざ』の購入金額は持ち直しを見せた。しかし、宇都宮ではさらに減少した。不況の影響だけでなく、『ぎょうざ』離れが依然続いているようだ。浜松では、不況の影響をはねのけて増やした。宇都宮では、宇都宮餃子の消費増は『ぎょうざ』購入額とは必ずしも連動しないが、浜松は、連動する構造になっていることが明暗を分けた。こうしてみると、浜松では『ぎょうざ』の購入金額は、今後も増える可能性が強い。餃子全体の消費量はともかくとして、家計調査の『ぎょうざ』の項目については、念願の日本一を奪取する可能性が出てきたといってよい。浜松が上げ潮に乗り続けられるか、宇都宮が再び上昇気流に乗れるのか、二強のデットヒートは、2010年も続く。