正月に餃子のある風景
正月と言えば、雑煮である。江戸時代の商家では、縁起をかつぐため、その餅のいくつかに、お金を入れる習慣があったという。お金と餅で「金持ちになる」と洒落たわけだ。同じ習慣が中国でもあった。こちらは餅でなくて餃子。目出度いときに餅が出てくるのは日本だが、中国では餃子がその役割である。餃子にお金を包み込み、その餃子に当たった者は金運に恵まれるというのも、日本と同じ。どこの国でも、同じようなことを考えるようだ。
中国では、小麦粉料理全般を「麺料理」と称する。麺は、日本では中国より狭い意味になってしまい、餃子を、麺料理だという人はいないだろうが、中国では立派にそのグループの一員である。中国で、小麦粉料理が一般的になるのは紀元前200年ごろからの漢の時代である。小麦粉に水分を加え練るところから、調理が始まるが、これを「餅(ピン)」といった。この後の調理法によって、焼く「焼餅」、蒸す「蒸餅」、揚げる「油餅」、茹でる「湯餅」に分化する。日本では、焼餃子がポピュラーだが、中国では水餃子が主流なので、餃子は湯餅の仲間になる。
小麦粉料理の「餅(ピン)」は、日本ではもち米を材料とする食品である「餅(もち)」に変化する。変化したが、目出度い食べ物としての性格は受け継がれた。それなら、餅入りの雑煮に飽きたら、餃子入りの雑煮にしてはどうだろう。手間はいらない。焼いた餅のかわりに茹でた餃子を入れればいい。汁も具も同じで構わない。日本式の「餅(もち)」が、中国式の「餅(ピン)」と入れ替わるだけである。これだけで、二つの国の縁起を担ぐことができる。
年始のご挨拶は「あけましておめでとうございます」だが、江戸時代にはもった簡単にして明快な挨拶があった。いわく、「御慶」。2012年は、宇都宮餃子にとっても多難な年だった。あの大震災以来、消費の低迷は続き、浜松市との家計調査「ぎょうざ購入額」日本一の争いも、苦戦を余儀なくされた。今年こその願いを込めて、餃子の雑煮を食べてはどうだろう。