餃子の街の駅弁当
6 餃子弁当の新展開
「始祖・宇都宮餃子弁当」が宇都宮駅で販売されたのが平成5年(1993)11月19日だった。これが、餃子駅弁の嚆矢であることはまず間違いないだろう。しかし、駅弁でない普通の弁当であれば、これより以前にもあったろうが、あまり一般的ではなかっただろう。宇都宮の餃子駅弁がどのような影響を与えたのかは定かでないが、その後、餃子弁当は徐々に市民権を得たようだ。その一つが、平成24(2012)年11月2日に発売されたセブン‐イレブンの「宇都宮餃子会監修!自家製焼餃子W弁当」だ。シンプルに焼餃子12個とライス漬物だけというこの弁当、宇都宮で言うところの「W(ダブル)ライス」の再現になっている。残念なことに、宇都宮市内の店舗のみで、しかも時期限定の発売だった。餃子会が「専門店とは違うが、一切妥協がない。これ以上の(餃子)弁当はない」と太鼓判を捺す出来ばえになっていた。「餃子を12個も入れた……というか、それだけの、豪快なお弁当。このインパクトは並じゃない。これは是非とも全国販売を願いたい所」という声も挙がった。
コンビニが餃子弁当を、たとえ地域、時期限定でも販売に踏み切ったことは、このころすでに餃子と弁当の組み合わせに、すでに違和感がなくなっていたのではないかと思われる。ちなみに、手元に平成24(2012)年10月26日に「食べログ」で「餃子弁当」を検索した結果がある。「口コミに『餃子弁当』を含むレストラン」として28件が表示されている。翌年の7月8日に同じ検索を試みると、4軒が消えて12軒が新たに加わって36件が表示された。(※)
このうち、目立つのは「餃子の王将」で、8店が検出された。王将の場合、全店舗で餃子弁当を販売しているかどうかは確かめていないが、多くの店舗で販売されているようだ。少し古くなるが、テレビ朝日の「お願いランキング」で、「餃子の王将テイクアウトランキング」が2009年10月5日に放送されている。1位はもちろん「餃子」だが、4位に「餃子弁当」がランクインしている。ほかに、「焼飯弁当」などの3種類の弁当がランクに入っているが、そのいずれにも餃子が添えられている。
餃子弁当を販売している宇都宮餃子の店は、食べログでの「口コミに『餃子弁当』を含むレストラン」の中には含まれていない。知る限りでも、そういう店は無いようだ。だが、宇都宮では、餃子のテイクアウトは普通の事である。さらには、「ライス」の持ち帰りができる店も少なくない。実質的には、餃子弁当が存在するが、餃子弁当と銘打っていないだけだと言えなくもない。
ちなみに、宇都宮の駅弁販売の松廼家も食べログに紹介されている。駅弁としては唯一である。評価は、3.07(料理そのものの評価は3.13)で、36件中の11位タイ。餃子の王将の8店が3.03~2.98なので、面目はまあまあ保っているといえるのだが、餃子の街の餃子弁当であれば、さらなるグレードアップが望ましい。松廼家の努力に期待したいが、宇都宮餃子会としても、何らかの支援はあっても良いのではないか。餃子の街の餃子駅弁のグレードは、宇都宮餃子の評価と無関係ではないのだから。
※ 9月25日時点では、さらに増えて41件になっている。「餃子弁当」の増殖に加速度がついてきたのだろうか?